前回のコラムでは、屈筋と伸筋の拮抗作用という特性、そして痛みや姿勢不良の原因が、屈筋群が伸筋群より強いことと日常の動作や運動で屈筋を使う割合が高いことであるため、伸筋系の動作や運動を意識的に行うべき、という説明をしました。
今回のコラムでは、伸筋の具体的な動きや胴体の連動性を加えた動きの重要性を解説します。
ここでは、高いものを取るという、日常動作でもある腕を上げる動作を考察します。腕を上げるには様々な筋肉を使いますが、可動域に直接関わるのは胴体の柔軟性です。
胴体は、首と四肢を除いた、骨盤から背骨、肋骨とそれらを覆う筋肉です。腕の動きには肋骨を覆う筋肉(大胸筋、肋間筋等)が深く関係してきます。
腕を左右それぞれ真っ直ぐ上げて(屈曲)、上げにくい側を確認します(① ②)。
上げにくい側の胴体前部、つまり大胸筋を伸展させてストレッチします(③)。
(写真では右腕が上げにくい場合とその対処法)
更に肋骨側面を伸ばします。手の平を後頭部に当て、思い切って伸ばします(④)。この二つの動作は、胴体を伸展させ側面を伸張させました。
もう一度腕を上げて(屈曲)比べると、上げやすくなります。
腕を上げる=屈曲の可動域を向上させるには、逆の伸展動作をしっかり行い、更に胴体と連動させると尚良いです。
腕を上げるための可動域を増やそうと、胴体との関わりを考慮せずに腕をそのまま繰り返し上げていると、元々強い屈筋ばかりを収縮させてしまい、関節に負担をかけ、結果として可動域が狭まったり、痛みを増長させたり、姿勢不良を加速させます。
以前のコラムでもご紹介した、関節の石灰化を誘発してしまうのです
(第163話 「身体の石灰化のお話」
http://melmaga.toy-hoken.co.jp/karada/2016-05-20-1425.php
第164話 「微酸道法上肢偏」
http://melmaga.toy-hoken.co.jp/karada/2016-06-20-1434.php
第165話 「微酸道法下肢偏」
http://melmaga.toy-hoken.co.jp/karada/2016-07-20-1441.php )。
次回は、胴体の動きを加味した脚と腰の伸展動作について具体的に解説します。
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