いまでも年間100人くらいは死んでいる?
「被ばくの問題を考えると、胃透視や大腸透視をうけるのではなく、いきなり内視鏡検査をうけることに魅力を感じるかもしれません。しかし内視鏡検査には、前述のようにさまざまな事故がつきもので、いまでも年間100人くらいは死んでいるはずですから、いきなり内視鏡検査をうけるのもおすすめできません」(228ページ)
胃透視や大腸透視の代わりに受けるとすれば、診断目的のための胃内視鏡や大腸内視鏡です。ところが「前述のように年間100人死んでいる」というのは、52ページのことを言っているのですが、ここに書かれているのは、診断目的も治療目的も含めた、しかも胃内視鏡や大腸内視鏡のほかにERCP(胆管や膵管の検査のため、胃の内視鏡を胃の奥にある十二指腸まで挿入し、胆管や膵管の出口からさらに細い管を挿入して造影剤を入れてレントゲン撮影する検査)も含めた内視鏡検査全体の事故率と死亡者数なのです。
しかも、そのあとの59ページではしっかりと、「ERCPは、とても危険な検査で、事故・死亡数とも他の内視鏡検査の平均よりもずっと高くなっています」「内視鏡を診断目的ではなく、治療目的に使う場合も危険です。内視鏡的治療による事故は診断目的の場合の40倍にもなっています」「全部で119人の死亡のうち、すくなくとも60人は治療に関連した死亡のようです」と書かれています。
ここでいう内視鏡的治療とは、ガン末期で手術が行なえず、危険を承知でやむなく行なうものが含まれているのです。
医師も本当はリスクの高いことはしたくないのですが、それによって患者が受けるメリットがリスクを上回ると診断されるときは、せざるをえないということです。
ERCPなども、この原理に従って、症状のある人や他の検査で異常のあった人に対して行なわれるのであって、一般検診で行なわれるわけではありません。
したがって、内視鏡治療やERCPの事故率が高くなるのはやむをえない点もあるのです。5年間で全部で119人の死亡のうち、60人が内視鏡的治療での死亡で、20人がERCPでの死亡であれば、内視鏡的診断での死亡は5年間で40人ほどとなり、1年あたりでは10人弱ということになります。
内視鏡的治療での死亡率は0.001%(10万人中1人)であることからも、年間100万人を検査した場合、計算上、死亡者は10人となります。
「大腸透視の事故の頻度は、(デンマークのデータでは)2万件の大腸透視で4人が大腸破裂で死亡した」(39ページ)とありますので、死亡率は0.02%(10万人中20人)となり、診断を目的とした大腸内視鏡の死亡率は0.003%(10万人中3人)ですので、胃内視鏡や大腸内視鏡は胃透視や大腸透視と比較してもかなり安全だということになるのです。
だからこそ、一般の方にも安全な検査としてお薦めできます。
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