今回のコラムでは、季節の変化に対する養生法を取り上げます。暖かくなり春風が吹いてくると新芽が一気に顔を出します。タケノコ、ゼンマイ、ワラビ等を好んで食される方も多いと思います。
栄養分をたっぷり含んだ新芽には同時に毒性もあるので、解毒する必要があります。その解毒を担うのが肝臓なので、東洋医学では春は肝臓が疲れやすく病みやすいと考えられています。
肝臓に負担をかけるものはアルコールや薬だけではなく、季節の食材の中にもあります。そんな食材を摂った際の解毒・分解を助けるのが酸味のある食品なので、酢の物などをしっかり摂りたいところです。
肝臓は疲労物質である乳酸などを分解する臓器ですから、肝臓の疲労によって乳酸などを十分に分解できないと、疲労を感じやすくなります。春は身体が重かったり、筋肉の疲労や凝りを感じている方がいつも以上に多いかもしれません。
肝臓は脂肪の分解も担いますが、その分解に必要な胆汁は胆嚢で生成されます。肝胆相極(かんたんあいきわ)まるという諺(ことわざ)があるように、肝臓と胆嚢は補完し合う密接な関係で、東洋医学でも陰陽(いんよう)の関係とされています。
身体のバランスを支える脚や胴体の外側の筋肉の疲労は胆嚢の反応とされ、その原因として、肝臓や胆嚢の負担・機能低下が考えられます。
腿の外側の筋肉が突っ張る、攣(つ)れる、痺(しび)れがある、肋骨外側の筋肉が硬くなる、こむらがえり、肋間神経痛等の症状も、肝臓や胆嚢の疲れが原因といえます。肋骨の硬さは胴体の硬さにつながり、肩・腕・首の可動域の制限・痛み・痺れ等を引き起こします。そして首の緊張は、頭痛の遠因にもなります。
このように見ていくと、頭部・首・四肢の可動域制限・緊張・炎症・痛みは胴体や肋骨の緊張によるもので、その原因は肝臓や胆嚢等、内臓の疲労と考えることができます。肩や首が痛いからと、その部位のみのレントゲンを撮ったり、鎮痛剤を服用しても、根本的な原因究明や解決にはなりません。
胴体のバランス・食習慣・ストレスなどが必ず絡んでいますので、総体的に見直す必要があります。漢方の処方は本来、そのような観点から調合されています。
私は、水200ccに大さじ1杯程米酢を入れて水で割って飲むことをお勧めしています。
また、足の親指や薬指の爪の生え際は肝臓や胆嚢の養生ポイントとなり、前記の症状に対して即効性があるツボなので、生え際を1~2分ツボ押し棒や指で刺激することも試していただきたいと思います。
ただ、何かを摂取するよりも、原因となる食物を控える、習慣を見直す、ストレスの原因を見つめ直すなどの方が回復は早く、先人が残してきた知恵の有効活用になるといえるでしょう。
新芽食材もほどほどに、酸味のあるものをこまめに摂取して、春を乗り切りましょう。
次回は土用の季節から健康を考えていきます。
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