前回までのコラムでは、痛みや姿勢不良の原因が、伸筋群より強い屈筋群を多く使うことによる拮抗作用のバランスの崩れが、歪みを増長して関節や筋肉を圧迫することであること、そして伸筋系の動作や運動を意識的に行う必要性と、上肢の伸筋の動きや胴体との連動性を加えた動きの重要性を具体的に解説しました。
「屈筋と伸筋」シリーズの最終話となる今回は、下肢の伸展動作の重要性について解説します。
腿を左右それぞれ屈曲(腿を上げること)し、上げにくい側を確認します(①②)。
腿を上げにくい側の胴体前部、つまり大腰筋を伸展させてストレッチします(③)。
(写真では左腿が上げにくい場合とその対処法)
さらに腿の筋肉と連動する胴体の骨盤側面を伸ばします。伸ばす側の脚を後ろに引いてクロスして立ち、骨盤を横にスライドさせ、胴体を逆側に伸ばします(④)。
もう一度腿を上げて(屈曲)比べると、上げやすくなります(⑤)。
このように、屈曲動作の可動性を向上させるには、まず弱い側の伸筋をしっかり伸ばすことが必要で、骨盤や胴体を連動させた動き作りが基本になります。
「屈筋と伸筋 その2」で言及した「腕の屈曲」、そして今回の「腿の屈曲」のいずれも日常生活で多用する動きですが、屈筋動作ばかりを繰り返し行うと関節に負担がかかり、筋肉が収縮して硬くなり、痛みと姿勢不良を招いてしまいます。
高齢者の機能訓練や転倒予防運動、リハビリの現場などでは、屈曲稼動域を維持することを目的にしています。その趣旨自体は良いと思いますが、屈曲動作を繰り返し行ったり、座位によって胴体を固めて行う動作が多くなる傾向にあります。
そこで前述のように、日常生活ではあまり使わない伸筋動作を意識的に行い、伸筋動作と胴体の動きを連動させることにより、関節に負担をかけずに屈曲可動域を維持・向上させることができます。そして関節の動きが滑らかになり、痛みが緩和されて姿勢も改善すれば、介護職員やご家族の負担が減り、介護職員不足の問題にも高齢者の機能向上や姿勢改善にも寄与できると思います。
伸筋の稼働率を上げること、胴体のしなやかさを養うこと自体が機能訓練である、と言っても過言ではありません。
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