今回のコラムでは、筋肉の特性とそこから見える問題について、2部構成で言及していきたいと思います。
筋肉の特性には「屈曲」と「伸展」があります。屈曲は、物を持ち上げる、身体を屈める、膝を曲げるなどの動作で、使われるのは上腕二頭筋、腹直筋、大腿二頭筋といった屈筋と呼ばれる筋肉です。
それに対して伸展は、腕を伸ばす、身体を反らす、膝を伸ばすといった動作で、上腕三頭筋、脊柱起立筋、大腿四頭筋といった伸筋と呼ばれる筋肉を使っています 屈筋と伸筋は互いに拮抗し、どちらかが伸びればどちらかが縮むというように、互いに影響しあっています。
筋肉を使う、筋肉に力を入れるとは、力を入れる側の筋肉を収縮方向に作用させることを指します。収縮は縮めることなので、屈曲させると同義です。つまり、筋肉に強い力を働かせたり力を込める場合、屈筋がメインなのです。
簡単に言うと、伸筋よりも屈筋の方が相対的には強いのです。
ふとんを持ち上げる、寝た状態から身体を起こす、身体を屈めて物を取るという日常の動作は筋力を必要とするので、普段から無意識に筋力トレーニングをしていることになります(※屈めてから身体を起こす動作、立ち上がる動作は伸筋ですが、無意識に強い側の屈筋=大腿四頭筋を使ってしまっています)。
つまり、屈筋は伸筋より強い上に、日常生活でもメインに使われているのです。
しかし関節に痛みがあるとき、関節には圧迫、詰まりが生じています。これは過剰な屈曲で、その圧迫を緩和するには、普段からしっかりと伸筋を使う必要があるわけです。
また、リウマチ性関節炎、寝たきりなどによる関節拘縮(こうしゅく=詰まって縮まること)の場合は、屈筋と伸筋の特性から、指や四肢が強い屈筋側へと変形したり、前屈みの姿勢不良を起こしています。
関節の拘縮を防ぎ、姿勢不良を増長させない為にも、日常的に伸筋を意識するべきですし、運動の後には、伸筋をメインにしたクールダウンを行うべきだというのが私の考えです。
繰り返しますが、屈筋系の運動に対して伸筋系のストレッチ等を行う割合が少ないと、段々と筋力は低下してしまい、関節の圧迫、姿勢不良を更に悪化させてしまうということに留意して下さい。
次回は、伸展筋群や胴体の連動性を加味した動き等について解説していきます。
▼ 関連記事 こちらもご覧下さい