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●ほとんど無意味な診断名?
「しかしじつは、『胃炎』『乳腺症』『びらん』などは、ほとんど無意味な診断名です。これらは病名とされていますが、だれにでもある変化なのです」 近藤誠著(124ページ)より
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検査で発見される「胃炎」や「胃のびらん」には臨床的な意味があるのです。
「胃炎」には、急性胃炎と慢性胃炎の2種類があります。急性胃炎は痛みや出血などの症状を伴い、治療の対象になります。当然意味のある診断名です。では、慢性胃炎はどうでしょうか。慢性胃炎は年を取るにしたがって胃炎の範囲が広がっていきます。年齢のわりに広がりの大きい人や、症状があって治療の必要がある人が、慢性胃炎の診断を受けることになります。
慢性胃炎は胃ガンになりやすく(早期胃ガンのうち85%以上は慢性胃炎の部位にあるといわれています)、定期的な胃内視鏡検査が必要です。したがって慢性胃炎の診断名には十分な臨床的意味があります。
また、「胃のびらん」には、良性びらんと悪性びらんがあります。
悪性びらんとは、ガンのことですが、良性のものとの識別は内視鏡だけでは難しいこともあり、必ず生検をして詳しく調べる必要があります。
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●若年者に無効なら、高齢者にも無効?
「検診が(胃ガン死亡率の高い)高齢者に有効なら(胃ガン死亡率の低い)若年者にも有効でなければおかしいはずで、それなら若年者も検診をうけたらいいでしょう。逆に、若年者に無効なら、高齢者にも無効というのが、原理的に一貫した考え方だと思います」 近藤誠著(144ページ)より
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この論理は成り立ちません。疾患の頻度が高いほど検査の有効性は増すはずです。
胃ガンの増える年代を考えて検査を実施することは、たいへん意味のあることだと思います。1人やるなら全員やらなければ有効でないという考え方をする必要はありません。もし、どうしてもというのなら、たとえば小・中学生の胃・大腸ガン検診や、男性の乳ガン検診も実施しなくてはならなくなります。
病気の頻度が上がると検診の効率も上がることは、乳ガン検診へのマンモグラフィ導入についての近藤氏の言葉、「おまけに日本の乳がん発生頻度は欧米の5分の1ですから、マンモグラフィが有効としても、効率は欧米の5分の1にしかなりません」(203ページ)にも書かれています。
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