「宿便」という言葉をご存知でしょう。
しかし、医学用語に「宿便」という言葉はありません。一般的な宿便のイメージは、大腸の粘膜に何年も便がこびりついているイメージだろうと思いますが、そういう宿便は、実際にはないのです。
大腸内視鏡で腸を覗くと、大腸粘膜はつるつるしています。こびりついて取れない便など全くありません。もしあったとしたら、大腸は水分吸収などできないでしょう。
ただし年輩の方だと、大腸の筋肉の薄いところが外に飛び出して、「憩室」と呼ばれる陥没部が腸にできてしまうことがあり、その中に入り込んだ便が石のようになって、「憩室糞石」と呼ばれることがあります。でも、これは量も少なく「宿便」とは呼べません。
大腸は、便を溜めておく場所で、常に2キログラムくらいの便がありますが、実はそのうちおよそ半分の1キログラムは腸内細菌の重さです。
大腸の奥のほうの便は、まだ粥状でドロドロしています。
大腸は、蛇行した川のように曲がりくねっていますので、流れの速いところと淀んだところができます。
流れが悪くて淀んだところには、特に腸内細菌が多くいます。
私はこの便を「宿便」だと考えています。
宿便は、多すぎても少なすぎても体によくありません。常に一定の量があって、絶えず入れ替わっているというのが、自然な姿です。
便秘で1週間も溜め込んだあとで、下剤で一気に全部出す、というようなことをやっていると、大腸細菌のフローラは安定しません。悪玉菌が増えるきっかけを与えて、結局便秘がひどくなるという悪循環も起こります。
宿便は、ただ「取りさえすれば、それでいい」というものではありません。善玉菌優位の状態で腸内環境を安定させることが最も重要なのです。
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