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私はよく、他の内視鏡専門医に挿入時間や挿入率を聞かれます。
大腸の一番奥の盲腸まで到達する時間と成功率のことですが、これは検査の経験数とともに、内視鏡技術の物差しになっています。
盲腸まで達した検査を、トータル・コロノスコピーといいます。トータル・コロノスコピーを5分以内でやるのが、一流だということになっているようです。
しかし、私は必ずしもそうは考えていません。
挿入時間5分と10分とでは、いったいどれだけの違いがあるのでしょう。患者さんを主体に考えるなら、いたずらに速さを競うより、苦痛を与えない、危険の少ない検査を目指してもらいたいものです。
また、どうしても挿入が困難な患者さんもいます。そういうときは検査時間がとても長くなり、患者さんにとってもかなりの苦痛を伴いがちです。他に代わる検査もあるのですから、あまり、深追いしてはいけないと思います。その時の検査ではなんとか挿入に成功しても、その患者さんがもう二度と検査を受けなくなったら、検診としては失敗でしょう。
たまに、「痛いからもうやめてくれ」と患者さんが言っているのに、「もうちょっとがんばりましょう」と、なかなかやめない医師がいますが、見ていて怖い気がします。
以前聞いた話ですが、某大学の教授が、大腸内視鏡の検査中「やめてくれ!」と叫んでいた患者に、検査が終わってから殴られたというのです。
本人は笑い話のつもりで話したのでしょうが、私は全然笑えませんでした。
その人の内視鏡の挿入技術の拙さを笑うというより、患者をどのように考えているのか、医師としてのあり方に首をひねりたくなります。
バリウム造影は、もちろん内視鏡より診断能力は落ちますが、大きなガンであれば、まず見逃すことはありません。
何が何でも内視鏡というのは、医者のエゴにすぎないわけで、患者さんの苦痛や事故の危険を考えると、必要なときには検査を中止することも大切なのです。
挿入時間や挿入率を議論する前に、患者さんの苦痛や事故率について議論してほしいものです。
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