特に遅れているのが、病院側の危機管理システムです。
死亡事故1件の裏には、国に報告すべき重大な事故が10件ぐらい起きており、報告されない程度の小さな事故は、さらにその10倍の100件ぐらいは起きているはずです。
死亡事故というのは、決定的な単一の原因によるものではなく、たまたまその時だけ起きるような小さなミスが重なったときに起きます。
しかし、けっして偶然ではないのです。
死亡事故を起こす病院というのは、ふだんから大きな事故、小さな事故を日常的にたくさん起こしており、その時点で危機管理ができていないから、いつか死亡事故にまで発展してしまうのです。事故を起こしても病院の体質はすぐには変わらないので、また同様の事故を起こす可能性があります。
だから、新聞などを騒がせたりした病院や、インターネットの医療訴訟の常連である病院は、敬遠したほうが無難です。
事故は、どのように起こるのか?
大腸内視鏡検査に伴う事故について、少し詳しく考えてみましょう。
大腸内視鏡検査では、穿孔(腸壁に穴を開けてしまうこと)と麻酔事故が最も怖い事故です。
内視鏡を腸壁に強く押しつけすぎると患者さんは痛みを感じますが、さらに強すぎると穿孔します。熟練した医者であれば、どれくらいなら押していいのか見当がつきます。経験を積んでいれば、「ああ、これ以上押したら患者さんは痛がるな、穿孔の危険があるな」という予測がつくのです。
しかし、内視鏡検査の経験が乏しい医師では、このへんの“さじ加減”がわからず、グイグイ押しすぎて腸に穴を開けてしまいます。穿孔事故が起きてしまえば、開腹手術となります。
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