私の便秘外来には、若い女性がたくさん訪ねて来ます。その人たちの悩みを聞くと、便秘の悩みは大変深いことがわかります。
便が出ないと一日気になって何もできない。生活が便によって支配されてしまうのです。
「こんなに苦しむなら、手術で大腸を切り取ってください」という人もいるくらいです。
そもそも、大腸は何のためにあるのでしょうか?食物は、小腸で栄養を吸収され、食物の残渣は大腸に行きます。大腸で水分を吸収され、便となって排泄されるのです。
大腸の目的は、食物の残渣から水分を吸収するとともに、便量を減らし、便をある程度の時間溜めておける状態にするということなのです。要するに、大腸は食物残渣の貯蔵庫であるわけです。
こう言うと、大腸というのはたいしたことのない器官であるかのように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
大腸の名誉のために言っておけば、大腸がなければ、われわれ人間は文化的な生活はできなかったに違いないのです。大腸がなければ便を溜めることができず、そこらじゅうに垂れ流すことになります。それでは、室内での生活は不可能でしょう。
どんな生き物にも小腸はありますが、常時垂れ流しの下等生物に、大腸はありません。
大腸というのは基本的に便を溜めるための器官なのですから、大腸内には常時便があります。大腸内に溜まっている便を称して「宿便」と呼ぶことがあります。
大腸に便が長時間滞留しているほど、便の状態は悪化します。すなわち、腐敗菌が増大し、大腸の中でどんどん腐敗ガスや有害物質を産生します。
その結果、お腹が張ったり、腹痛といった症状が起こり、便秘がひどくなるだけでなく、大腸ガンになりやすい環境を作ることになります。
便通は、通常一日一回以上あるものですが、もともと個人差が大きく、重度の便秘症で一ヶ月も便通がないという人も存在します。三日に一回でも、定期的に便通があり、その他の症状がなければ治療対象にはなりませんが、二日に一回でも、症状が伴い、生活に不便があれば積極的に治療します。
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