ところで、フィンランドの人たちは大量に脂肪を摂っている割に大腸ガンが少ないのですが、なぜでしょう。その理由は、欧米人の平均値よりかなり多量に食物繊維を摂っているところにあるらしいことが調査によってわかってきました。
日本人は昔、芋や豆をたくさん食べていたので、食物繊維の摂取量は十分でした。そのため便の量も多かったようです。戦後、アメリカ人の医師が日本人の便を見て、その量の多さにびっくりしたという話もあるほどです。
ところが、ここへきてたった数十年の間に食事内容が急に変わってしまい、前述したとおり、脂肪摂取量が増え、反面、食物繊維の摂取量は激減しました。その結果、便の量はずっと少なくなってしまいました。便の量が少なくなると、便秘になります。
便秘がなぜいけないのかというと、便秘というのは、生ゴミを捨て損なって腸内にどんどん溜めていくようなもので、放っておけば有害な物質が大腸の粘膜に作用し、ガンへの近道になるからです。
では、なぜフィンランド人のように食物繊維をたくさん摂っていると大腸ガンが少なくなるのでしょう?食物繊維は、具体的にどのように働いてくれるのでしょうか。
第一に、便秘防止に効果があります。
食物繊維は消化されないため、たくさん摂ると便の量が増え、ところてん式に押し出されるので便秘になりにくいのです。便の量が少なければ、一ヶ月溜めておいても平気だったりしますが、便の量が多いと毎日のように出さないとならなくなるので、必然的に腸内の便の回転(ターン・オーバー)は早くなるわけです。
第二に、腸内の毒性物質を吸収してくれるのです。
食物繊維にはすごく大切な効用があって、一言でいうと、大腸を雑巾掛けしてくれるのです。雑巾が腸内の毒性物質をきれいに吸い取って、便と一緒に外に排出してくれます。
ただし、「私は便秘とは縁がない快便人間だから、大腸ガンの心配などない」と安心していただいては困ります。高齢になれば、便秘であると否とにかかわらず、大腸ガンの発生率はグッと高まりますし、まったく便秘症状を伴わない大腸ガンもたくさんありますから注意が必要です。
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