平和な世の中に慣れてしまった生活。突然の災害・事件に対処できるのだろうか?

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身近に感じる危機管理

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平和な世の中に慣れてしまった生活。突然の災害・事件に対処できるのだろうか?

第130話 類焼のリスク

仕事柄でもありますが、たくさんの火災事故を担当してきました。

ご契約者自身が失火元(火元)であることが殆どでしたが、類焼(もらい火などとも言われます)による被害報告も少なくありませんでした。
その中でも一軒家での類焼は少なく、意外にもマンションでの類焼が多かったように記憶しています。

火災を発生させる確率は200年に一度。とか教えられた記憶があります。
しかし周りに3軒密集していればその確率も4倍になり、50年に一度類焼も含めて火災事故に出会う確率になります。

この計算をマンションに置き換えますと、戸室分の確率があるといっても過言ではありません。
マンションにおける消火活動による水の被害は、直接階下に落ちるばかりではなく、斜めにも落ちていきます。
しかもこの水漏れは数日間は続き、季節によっては数か月に及び、押し入れなどはカビてしまいます。

以下は、実際に起きたマンション類焼の例です。

【不審火により隣家より失火】

バブル真っ盛りのころ、10階建てマンションを新築されたお客様がいらっしゃいました。
都内は上野駅から歩ける距離に先祖代々の土地をお持ちで、角地でもあり立地条件がとても良い所でした。すぐ裏には大工の棟梁がご夫婦でお住まいになっており、幾人か職人さんも住まわせていました。
在来工法で建てられた一般的な日本家屋で、庭には足場を組むための柱や材木が立てかけられ、ひと昔前に見かけた懐かしい職人さんの光景でもありました。
この土地が幾たびも地上げ交渉に合い、ご夫婦は断り続けていたようですが、ある日の深夜、不審火が出て全焼してしまいました。

幸いにもこの火災事故全体に於いて死傷者はゼロでしたので、この文章を書かせていただきます。

お話を新築のマンションに戻しますが、10階建てのマンションにも燃え移りそうになりました。
二階建て家屋から燃え上がる炎の高さは、マンションの3階~4階に襲い掛かります。
窓ガラスは迫りくる炎の熱で飴細工のように溶け、ヒビが入り有毒な煙が部屋に侵入していきます。
この高さのマンションガラスには消防法上ワイヤー入りガラスの設置が必要で、このワイヤーのおかげで煙の侵入と炎の室内類焼を何とか食い止めています。
そして部屋で寝ていた住民も、大家さんにたたき起こされるまで少し煙を吸って昏睡しておりましたが、大家さんの機転で一命をとりとめました。
鎮火後のマンションを見舞いも兼ねて訪問しましたが、上野駅からも見えるマンションは、煙と煤で最上階まで真っ黒になっていました。

この様に、ご自身のお住まいが鉄筋コンクリート製でも、類焼の被害は大きなものになる可能性があります。

【隣の部屋から失火】

別の例では、新宿の中層階マンションの一室を事務所として使用されている法人のお客様がおりました。
失火元になるお隣は、若い方お二人でデザイン事務所を経営していました。

ある早春の昼下がり、台所の壁から「パチン!パチン!」と妙な音がします。
「何の音だろう?」と不審に思い、ドアを開けて廊下に出てみると、既に隣のデザイン事務所から黒い煙が吐き出され、ドアを開けてしまったことからご自分の事務所にも黒い煙がものすごい勢いで入ってきて、とても戻れる状態じゃありません。
「帳簿だけでも回収したい!」と思いながらも「ここで戻るから、煙に巻き込まれるんだ…」と思いなおし、そのまま退避することを決断。

これが正しい判断でした。

失火元であるお隣のデザイン事務所では、紙だらけの机の上にタバコの火が燃え移り、デザイン用のペーパーセメントに引火して炎が大きくなったようです。
それでも二人は何とか消し止めようと必死になっていたようですが、もう一人のアルバイトさんが「このままじゃ危険だ」と判断して、廊下に出てしまいました。
この瞬間、新鮮な空気が室内に入りフラッシュオーバーを起こし、二人は煙に巻かれてしまいました。
そして、この煙が隣の部屋にも侵入し、消防隊の到着が遅れていれば類焼に発展していたところです。

消火活動は、この隣の部屋を利用して行われます。消防隊員は長靴のまま入室します(当然ですね)。そして、室内のあらゆる扉を強引に開け放ち、人が隠れていないかチェックします。
これでは布団や衣類は煙の臭いで台無しです。
そして人が残っていないことを確認出来たらホースを持って入室しベランダまで通り抜けます。そしてベランダから隣の部屋を消火します。大量の放水により、階下の部屋では室内に水が降ってきて、どちらのお宅でも水浸しになっていました。

これも類焼の一種です。失火元には法律上賠償請求できませんので、ご自分で加入している火災保険を頼る自助努力しか方法がありません。
後日、火災事故の鑑定人と訪問しましたが、隣との壁が充分に焼けてしまいましたので、コンクリートとして本来の強度が失われています。
大規模な震災などには耐えられないと診断し、建物を全損認定されました。

マンションにおける類焼は、炎によるものより煙の臭いや煤の被害。そして数日間残る水の被害が殆どです。

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