先月10月には、陰惨な交通事故が続きました。その中からタイヤ落下による事故を検証してみます。
岡山県中国自動車道で起きたタイヤ乗り上げ事故は、トラックのスペアータイヤが原因で発生しました。
馴染みが無いかもしれませんが、車高の低い乗用車でトラックの後部に着くと、横向きにぶら下がっているスペアータイヤが見えますよね【図1】。このスペアータイヤ、自重が80kgから100kgもあり、一人で持ち上げることが不可能に近い重さです。ですからチェーンブロック方式で少しずつ巻き上げて吊り上げる方式になっています。【図2】を参照していただきたいのですが、簡単なプレートで引き上げられています。チェーンが緩めばスペアータイヤは暴れだし、落下の可能性があり得ます。
しかもこの緩みについては、乗車前の点検項目に入っていません。今回の事故を鑑み、国交省は緊急点検を要請したようですが義務や罰則はありません。
しかも今回の事故は、このスペアータイヤだけが落下した訳ではなく、スペアータイヤホルダーごと落下していたのです。こんなものが高速道路に落ちていれば、さすがのトレーラーでも走行突破できずに横転してしまうでしょう。それでもトレーラー運転手にも過失割合は振り分けられることになると思います。
何故スペアタイヤホルダーごと脱落していたのか。原因究明はこれからのようですが、次のような事が考えられます。冬場の高速道路ではスリップを防ぐために塩化カルシウムの粒を撒きますが、この強い酸性物質が付着すればトラックのシャシーも錆びて腐食することがあります。他にも積み荷作業のためにスロープのある倉庫にギリギリまで近づけるようにバックしてスペアータイヤホルダーを損傷してしまうケースなどもあるでしょう。
さて、話は続くのですが少し目先を変えて、我がことに置き換えて考えてみましょう。文中でも、落とし物に乗り上げて事故を起こしても過失を分けることになる。と説明しました。直前で落とされた場合と、落とされてからしばらく時間が経過している場合では、割合が異なってくるのですが、どちらにしましても幾分かの賠償金を支払わなくてはなりません。この様なケースを共同不法行為といい、落とし主が見つからない場合には、賠償金全額を取りあえず負担しなければなりません。納得がいきませんが、これを不真正連帯債務と言います。被害者救済の見地から考えられた法律でしょう。この様なケースに、いつ遭遇するかもしれません。クルマ社会では、想像を絶する事故が多発しており、いつ自分が巻き込まれるか分かりません。万全な任意保険に加入しておくことをお勧めいたします。
■融雪剤(塩化カルシウム)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9E%8D%E9%9B%AA%E5%89%A4
■大型トラックの スペアタイヤ落下事故の原因(動画youtube)
https://www.youtube.com/watch?v=ait3Hee9tcw
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